PR

インパーソンの入り口

野球
アンドレ・ドーソン(イラスト/星 和弥)
PR

in person【イン パーソン】①(代理ではなく)本人が(直接)、自分で ②実物[本物]は ③容姿は
「小学館 プログレッシブ英和中辞典」より

初めてメジャーリーガーに会えるチャンスが!

ワタシがメジャーリーグに興味を持ったのは1995年。
野茂英雄がロサンゼルス・ドジャースに入団し、トルネード旋風を起こした年だ。
この頃は友人のEKとともに渋谷の「ワールドスポーツプラザ」や明大前の「jo’sスポーツカード」に行ってはメジャーリーグのトレーディングカードを買い、チームや選手、さらにはMLBの世界についての知識を増やしていた。
そんな中で得た知識に「メジャーリーガーは球場でサインしてくれるらしい」というものが…。

どうやらアメリカでは「ファンサービス」というものが普通に行われているらしい。
しかし、当時のワタシとEKには渡米する時間もお金もない。ファンサービスとやらを実際に自分の目で確かめられず、「いつかアメリカに行きたいねぇ」なんて話をEKとともに延々と繰り返していた。

そんなとき、大塚製薬がGW期間中に「オロナミンC・ベースボールフェスティバル」というイベントを東京ドームのプリズムホールで開催するという情報をゲット。
このイベントにアンドレ・ドーソンが出演するという。
ドーソンと言えば通算400本塁打&300盗塁以上を記録した俊足強打の選手。この記録はMLB史上、他にウィリー・メイズ、バリー・ボンズ、アレックス・ロドリゲスの3人しか達成していない。
ちなみに、当時のワタシとEKといえば、ドーソンのトレーディングカードを見て「こえぇ顔してるな!」が第一印象で、カードの裏の成績を見て驚く、という程度の知識レベルだった。
EKなんて「このカードは魔除けになるな」なんて失礼なことを言っていたくらいで…。何も知らないというのは恐ろしいもんだと今になって思う。

アンドレ・ドーソン
■1954年7月10日生まれ ■アメリカ出身 ■190.5cm/88.5kg ■右投右打 ■外野手 ■モントリオール・エクスポズ(1976~1986)-シカゴ・カブス(1987~1992)-ボストン・レッドソックス(1993~1994)-フロリダ・マーリンズ(1995~1996) ■本塁打王(1987)、打点王(1987) ■2010年殿堂入り

イベントにうれしすぎるオマケが!!

イベント当日、ワタシとEKは筆記用具、さらにはドーソンのお気に入りカードをそれぞれ持参。
ただし、この段階でドーソンがサイン会を開いてくれるという情報はなかった。

会場内に入ると、この日は水曜日ということもあってプリズムホールは人がまばら。
どう多く見積もっても多くて50人ちょっとくらいしかおらず、広い会場の前のほうに人がぎゅっと集まると明らかにスカスカ状態に。
いくらなんでもこのお客さんの数では元メジャーリーガー(ドーソンは前年に引退)に失礼だろう、もしかしたら怒って帰ってしまうんじゃないか…なんて話をEKとしていた。

しかし、イベントが始まるとマイアミ・マーリンズのユニフォームに身を包んだドーソンが、あのおっかない顔ににこやかな笑みを浮かべながら登場。
トークショーで現役時代の思い出を語ったのちに質問コーナーに移り、ここでEKが「強敵だった投手は誰でしたか?」と質問。「ノーラン・ライアン1」というドーソンの答えにEKはご満悦の様子だった。

さらにドーソンはお客さん1人ひとりに対してバッティングをレッスン。
確か1球ずつだったが、実際にティーバッティングをドーソンが見てアドバイスをするという、かなり本格的なものだった。
このとき、ワタシは緊張と力みすぎでティーをバットで思いきり叩いてしまい、司会の方に「もしかして、ストレス溜まってますか?」と聞かれてしまった。
そんなワタシにもドーソンは「肩の力を抜きなさい」としっかり助言してくれて、2球目はうまく打つことができた。

イベントはここで終了…かと思いきや、最後にドーソンがサインボールを配ってくれる催しが!
それも1人ひとり、ドーソン自身が手渡してくれるなんて…。
メジャーリーガーって本当にファンとの距離が近いんだなぁということを実感してしまった。

この頃、MLBファンは本当にMLBに飢えていたと思う。なかなかMLBの情報を得られなかったからだ。
そんななか、憧れのメジャーリーガーと直接出会えるチャンスが到来。この機会を逃せば、次はいつ会えるかわからない。
ワタシとEK以外にもドーソンにまつわるグッズを持参しているファンがたくさんいた。中にはカブスのヘルメットを持ってきて、「これにサインしてほしいんですよ」なんて話すファンまで…。
サインボールがいただけたのはもちろんうれしいし、ありがたい。でも、できれば自分が持参したグッズにサインしてほしい…。それがワタシたちの願いだった。
そのうち誰かが司会の方に「ドーソンから直接サインをいただけないか」と聞いてくれたのだと思う。

すると、司会の方が交渉してくれたのか、舞台の奥に引っ込んでいたドーソンが再び登場!!
ファンが差し出すグッズやトレーディングカードに丁寧にサインしてくれた。
ワタシはドンラスのトレーディングカードにサインをしていただいたうえに握手まで…。
これがワタシにとって人生で初めて本人からいただいた、記念すべき一筆になった

それから25年以上。
ドーソンが教えてくれた喜びがきっかけとなって、今もワタシは自ら野球選手のもとに出向いてサインをいただくインパーソン活動を細々と続けている。最近では力士というジャンルも加わった。
あのとき足を踏み入れた世界の出口はまだまだずっと先のようだ。

(お出かけ日:1997年4月30日)
※敬称略させていただきます。

  1. 1970年代から1990年代前半にかけて活躍した豪速球投手。通算324勝292敗。最優秀防御率2回、最多奪三振11回のタイトルを獲得しほか、ノーヒットノーラン7回、通算5714奪三振など数々の記録を持つ。 ↩︎
タイトルとURLをコピーしました