「犬神家の旅籠屋 in 長野②「望月宿」~中山道のかつての宿場町~」からのつづき
1976年公開の映画「犬神家の一族」にて、ある依頼を受けた探偵の金田一耕助が泊まったのが「那須ホテル」だ。
ここで金田一は犬神家に寄寓している野々宮珠世の乗るボートが沈みかかっているのを目撃し、彼女の救出にひと役買う。さらに、依頼者である弁護士の若林が金田一と出会う直前に殺されるという事件がホテル内で発生。信州でも有数の財閥である犬神家の遺産相続争いに、金田一は否応なしに巻き込まれていくことになり…。
その「那須ホテル」の撮影場所として使用されたのが、今回ワタシたちが泊まる「井出野屋旅館」だ。
作中でホテルのご主人を演じていたのは原作者の横溝正史で、女中のはるを坂口良子が担当。
また、作中ではお宿のそばに湖が広がっていたが、実際には湖はない。
信州ならではの料理に舌鼓!
「井出野屋旅館」は木造3階建てのどっしりとした建物だ。
大正13年(1924)に料亭として開業し、戦後は一時的に独身者向けの下宿屋として営業していたが、その後に旅館業へ転向。
ただし、「井出野屋旅館」は経営者が高齢のために2023年5月いっぱいで廃業し、土地と建物を合わせて1,880万円で売りに出されることになった。
そのため、今回は施設のデータは住所のみにとどめておく。
井出野屋旅館
■住所:長野県佐久市望月254
※現在は廃業
17時に散策から戻ってきたワタシたちは、さっそく3階の部屋へ案内していただく。
3階は黒光りする廊下を中心にして、その左右に各部屋の障子が並び、それぞれの部屋は二間続きになっている。
この日は3階に泊まる他のお客さんがいないのだとか。そこで広々と寝られるよう、ワタシたちの部屋に布団を2組敷き、向かいの部屋に布団を1組用意していただいてあった。ありがたいことです。
部屋は昔ながらの和室で、掛け軸のかかった床の間がある。
養蚕業が盛んで料亭を営んでいた頃は、ここに芸者さんを揚げることもあったのだろう。
夜になるとそれぞれの部屋に明かりが灯され、三味線の音色が漏れてきて…なんて光景を旧中山道から見上げたらどんな気分だったろう。ふと、そんなことを考えてしまった。
食事は1階にある個室の食事処でいただく。
メニューは手打ちのそば、馬刺し、鯉の甘煮、野菜の天ぷら、ニジマスの塩焼き、野沢菜など、長野ならではのものばかり。
事前に集めた情報によると、オススメのひとつに鯉料理が入っていた。
ワタシ個人としては苦手かも…と思っていたが、実際にいただいてみるとおいしくてねぇ。
どれから箸をつけていいかわからない贅沢な時間を過ごせて幸せでした~。
食事のあとは風呂へ。大の男3人(特にワタシとHさんがでかい)が一緒に入るには少々手狭で、交替しながら湯船に浸かった。
続いて部屋でプチ宴会。ただ、3階にワタシたち以外の宿泊客がいないとはえ、騒ぐには気が引けるような雰囲気が建物にあったため、宴会はおとなしめに。
そして寝る段階になって、廊下を挟んで別の部屋で寝る1人を決めるためにジャンケン。結局、ワタシが負ける。
あとで聞いた話だが、Nさんはジャンケンで絶対に勝ちたかったと力説していた。
井出野屋旅館での最初で最後の朝
翌30日は7:30に起床。9:00頃にお宿を出る。
「井出野屋旅館」の方たちはみなさん気さくで、滞在中はとても気分がよかった。
帰り際、ご主人に「また来てよ」と言っていただいたが、それももう叶わないのが寂しい…。
この日は旧中山道を歩いてみようという話になり、望月宿と芦田宿の間にある茂田井間の宿を目指す。
もちろん歩きで、ですよ!
「犬神家の旅籠屋 in 長野④「茂田井間の宿」~中山道を実際に歩いてみる~」へつづく
(お出かけ日:2014年11月29日~11月30日)
※敬称略させていただきます。
※施設情報は2024年9月時点のものです。
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